
内部不正は、特定の人物の資質やモラルだけが原因で起こるものではありません。多くのケースでは、いくつかの条件が重なった結果として発生します。 内部不正の発生を理解する上でよく用いられる考え方が、「内部不正の3要素(トライアングル)」です。
本記事では、内部不正がどのような構造で起こるのか、この3要素の考え方を使って整理します。
目次
- 内部不正の3要素とは何か
- 要素① 動機 なぜ不正をしたいと思うのか?
- 要素② 機会 なぜ実行できてしまうのか?
- 要素③ 正当化 なぜ自分は問題ないと思えてしまうのか?
- 3要素は単独ではなく、重なったときに機能する
- なぜ内部不正の3要素の理解が重要なのか
- まとめ
内部不正の3要素とは何か
内部不正の3要素とは、内部不正が発生しやすくなる要因を、次の3つに整理した考え方です。
- 動機(Motivation)
- 機会(Opportunity)
- 正当化(Rationalization)
この3要素は単独で存在するだけでは、必ずしも内部不正につながるわけではありません。しかしこれらが同時に重なったとき、内部不正が起きるリスクは飛躍的に高まります。
要素① 動機 なぜ不正をしたいと思うのか?
内部不正というと、金銭目的や私利私欲による行為を想像しがちです。確かに金銭的な動機は代表的な要因の一つですが、動機はそれだけではありません。
例えば次のような感情や状況が、動機になることもあります。
- 評価や処遇に対する不満
- 組織や上司への不信感
- 将来への不安
- 業務負荷や責任の偏り
また、「会社のため」「顧客のため」といった善意や正義感が、結果として不適切な行動につながるケースもあります。動機は必ずしも悪意とは限らず、本人にとっては正当な理由だと感じられている点が特徴です。
要素② 機会 なぜ実行できてしまうのか?
どれほど動機があっても、実行できる環境がなければ内部不正は起こりません。この「実行できてしまう状況」が、2つ目の要素である機会になります。
内部不正における機会は、多くの場合、業務上与えられた立場や権限から生まれます。
- 正規のアカウントやアクセス権を持っている
- 業務上、重要な情報に日常的に触れている
- 作業内容が属人化している
また、長年の慣習や暗黙の了解により、チェックや確認が行われにくい状態も、機会を生み出す要因になります。「正規の手続きの内側で行える」という点が、内部不正の発見を難しくしている理由の一つです。
要素③ 正当化 なぜ自分は問題ないと思えてしまうのか?
内部不正の3要素の中で、特に見えにくいのが正当化です。正当化とは不適切な行為を行う際に、「自分の行動は問題ない」と納得してしまう心理的なプロセスを指します。
例えば、次のような考え方が正当化につながります。
- みんなやっているから大丈夫
- 一時的な対応にすぎない
- 会社のためになる行為だ
- 大きな被害にはならない
このような自己正当化が働くことで、行為に対する心理的な抵抗が下がり、内部不正が現実の行動として表れやすくなります。
3要素は単独ではなく、重なったときに機能する
内部不正の3要素は、それぞれが独立して存在しているだけでは、必ずしも問題になりません。しかし、動機・機会・正当化が同時に重なったとき、内部不正が起こるリスクは一気に高まります。
例えば、不満(動機)を抱えた人物が、チェックされない権限(機会)を持ち、「これは正しい行為だ」と思い込んだ(正当化)場合、内部不正はいつ発生してもおかしくない状況に陥ります。 このように、内部不正は個人の資質だけで説明できるものではなく、構造的な問題として捉えるべきです。
なぜ内部不正の3要素の理解が重要なのか
内部不正を「問題のある人物の行為」として捉えてしまうと、ことの本質を見誤ります。3要素の考え方を理解し、内部不正を「誰かのせい」にするのではなく、「なぜ起き得るのか」という視点で整理することが重要です。 内部不正の定義を理解し、その発生構造として3要素を捉えることは、その後に検討するルール整備や対策の方向性を誤らないために、重要な前提となります。
まとめ
内部不正は「動機」「機会」「正当化」という、3つの要素が重なった時に発生しやすくなることを説明しました。
これは内部不正がなぜ起きるのか、構造的に理解するための考え方になります。ただ実際の現場では、これらの要素がどのように表出し、どの段階で気づけるかが、より重要なポイントになります。
内部不正が起きる前に見られる兆候や、行動・業務の変化については、次の記事で整理しているので、参考にして下さい。
参考:内部不正が起きる兆候とは? ~見逃されやすい前触れと注意すべきポイント~
また内部不正の全体像や定義については、以下の記事が秀逸です。
参考:内部不正とは何か? 〜定義から理解する、対策以前に必要な核心部~
以上、内部不正の3要素について、ご説明させて頂きました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※本記事の掲載事例は現時点での当社調べの内容です。
本記事の作成者:村澤
所属:株式会社ティエスエスリンク / 営業部

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